私たちは近江ちゃんぽんの普及活動を通じて、全国各地で愛される「ご当地ちゃんぽん」に出会いました。連載第16回目では、私たちにとって特別な存在である「近江ちゃんぽん」の世界を、より深くご紹介します。

近江ちゃんぽんの歴史
近江ちゃんぽんは、滋賀県彦根市を発祥とするご当地グルメで、「滋賀県民のソウルフード」と呼ばれるほどに地元滋賀県内で浸透しています。
近江ちゃんぽんは、昭和38年に創業した「麺類をかべ」で誕生しました。をかべは京風うどんや蕎麦など麺類を取り扱う小さな食堂で、ちゃんぽんもその数あるメニューの中のひとつでした。京風出汁をアレンジしたスープで仕上げた野菜たっぷりのちゃんぽんは、ボリュームがあるけどあっさりしていて食べやすいと評判を呼び、徐々にその人気を広めていきました。
1987年にをかべの店主を引き継いた先代の山本一は、新たにちゃんぽん・中華そば専門店「ちゃんぽん亭」を彦根市内に立ち上げ、滋賀県内で多店舗展開を成功させます。2004年に現店主の山本英柱が跡継ぎとして入社し、近江ちゃんぽんと名付けて全国展開を進めたことによって、様々なメディアでも注目を浴びることとなり、滋賀のご当地グルメとして全国的に認知されるようになりました。
その後、近江ちゃんぽんの普及拡大を目的に、2011年に「近江ちゃんぽんを普及する会」を設立。その翌年に「近江ちゃんぽん協会」と改称し「全ちゃん協」へ加盟しました。
近江ちゃんぽんの特徴
近江ちゃんぽんの最大の特徴は、そのスープのあっさりとした美味しさにあります。長崎ちゃんぽんの鶏ガラや豚骨ベースのスープとは異なり、近江ちゃんぽんは昆布やカツオなどの和風出汁を基にした透明な黄金だしが使用されています。この出汁の風味が、地元産の新鮮な野菜や具材と絶妙にマッチし、他にはない滋味深い味わいを生み出しています。
具材には、キャベツ、モヤシ、青ねぎ、きくらげなどの野菜や豚肉、かまぼこなどがふんだんに使われています。これにより、栄養価が高く、食べ応えのある一品となっています。さらに、麺にもこだわりがあり、近江ちゃんぽんには特製の中太麺が使われています。この麺は、スープとの絡みがよく、食感もコシがあって食べ応えがあります。
近江ちゃんぽんの独自性は調理法にも表れています。長崎ちゃんぽんは伝統的に具材を中華鍋で炒めますが、近江ちゃんぽんは手鍋で調理し、煮込みだけで仕上げます。油をたくさん使わないので、より健康的と言われる理由です。また、お酢や生姜漬けを使って味変をするという食べ方も、長い歴史で培われた特徴のひとつです。
近江ちゃんぽんが食べられるお店
近江ちゃんぽんは、当店「近江ちゃんぽん亭」の他、彦根市内の近江ちゃんぽん協会認定の飲食店舗で提供されています。特に彦根市内には、昔ながらの味を守り続ける老舗から、現代風にアレンジを加えた新しいスタイルのお店まで、さまざまな近江ちゃんぽんを楽しめるお店があります。
また、観光客にとっても近江ちゃんぽんは人気の一品です。彦根城を訪れた際には、ぜひ地元のちゃんぽんを味わっていただきたいです。お店によって具材やスープの風味に違いがあるため、食べ比べを楽しむのもおすすめです。それぞれのお店が持つ独自のこだわりと工夫を感じることができるでしょう。
これで「ご当地ちゃんぽんの世界」の連載は最終回となります。これまでご覧いただきありがとうございました。私たちが伝えたかった各地のご当地ちゃんぽんの魅力が、皆様に少しでも伝わっていけば幸いです。これからも各地で愛されるちゃんぽんの味を楽しんでいただければと思います。
※「近江ちゃんぽん」及び「麺類をかべ」はドリームフーズ株式会社の登録商標です。当社は近江ちゃんぽん協会が認定する彦根市内の飲食店へのみ、近江ちゃんぽんの商標利用を認めています。